森本 小百合さん

2015年度にはつしば学園小学校(現:利晶学園小学校)を卒業後、
清教学園中学校を経て、2019年1月から舞妓の修行に入る。
現在は祇園甲部で舞妓としてお座敷に立ち、舞を披露したり、
お客様と会話したりしながら、宴席に華を添えている。

祇園甲部の舞妓で、2年連続で売上トップである売花奨励賞を
受賞した森本小百合(芸名:柚子葉)さん。
中学生の時、祖父に連れて行ってもらったお座敷で初めて舞妓に出会い、
その美しさに一目惚れ。
中学3年生の1月から憧れの世界へ飛び込み、お稽古を重ねて、
現在は舞妓として活躍しています。
人間関係が大切な芸の世界で、柚子葉さんを支える
小学校で身についた力について伺いました。

舞妓という存在に出会い、その美しい姿に一目惚れ

私は今、祇園甲部で舞妓として働いています。昼間はお稽古に励み、夜はお座敷に出て、お客様に舞を披露したり、お話をしたりして、宴席に華を添えるのが仕事です。この世界に憧れを抱いたのは、中学3年生の夏休みに祖父と京都を訪れ、お座敷に連れて行ってもらったことがきっかけでした。

そこで出会った舞妓さんの美しさと振る舞いに心を奪われました。18歳で当時の私と年齢が近い舞妓さんは、祖父のような年配者から中学生の私まで、その場にいた全員を楽しませてくれました。そして、舞を披露する時には雰囲気がガラッと変わり、優雅な舞に魅了されました。見た目だけでなく、彼女の内面からあふれる気品や、人を楽しませる力に感動し、「私もこんな女性になりたい」と強く思い、舞妓という存在に憧れるようになりました。
舞妓になるためには、中学校を卒業後、置屋に住み込みで修行をする必要があります。祖父に相談すると最初は冗談だと思われましたが、私が本気であることを知ると、置屋の女将さんに話してくれました。こうして、私は2019年1月から京都で修行を開始。初めて触れる京舞、三味線、鼓、お茶のお稽古は厳しいものでしたが、新しい世界に心が踊りました。特に京舞井上流は、私が所属している祇園甲部で大切に踊り継がれてきた伝統舞踊です。最初は思うように舞えず苦労しましたが、人間国宝であるお師匠さんの指導のもと、少しずつ上達していることを嬉しく感じています。お座敷では、私たちの舞だけでなくお話も楽しんでいただくことが重要です。会話を通して、お客様に喜びと癒しを感じていただけるよう、日々精進しています。私が舞妓の世界に憧れるきっかけとなった先輩のように、年齢や立場を問わずその場にいるすべての人を笑顔にする芸妓になるのが目標です。
舞妓という特殊な世界に飛び込む勇気を持てたのは、小学校で自分の好きなことを大切にする姿勢を身につけられたからだと思います。勉強だけでなく、興味を持ったことにどんどん挑戦できる雰囲気の中で、私は「好きを追求する力」を育むことができました。この力は、これからも私の人生を豊かにしてくれると信じています。

レインボー活動を通して、人との向き合い方を学んだ

お客様、お稽古のお師匠さん、置屋の女将さん、お姉さん方など、芸舞妓の世界では人との関わりが多く、とても重要です。私が人間関係を築く際の基盤となっているのは、小学校時代のさまざまな経験です。特に思い出深いのは、「レインボー」と呼ばれる縦割り活動です。

1年生から6年生までの異なる学年の生徒が一緒に過ごし交流を深める中で、先輩や後輩との関わり方を学びました。低学年の頃は、高学年の先輩に積極的に話しかけ、素直に頼ることで多くのことを教えてもらいました。その経験のおかげで、今でもお姉さん方との細やかなやり取りを大切にし、さまざまな助言をいただきながら日々成長しています。さらに高学年になると、今度は年下の子をサポートする立場になりました。相手の立場を考えながら接することの大切さは、舞妓の中で最年長となった今、後輩に助言する場面で思い出すようにしています。こうして小学校時代に学んだ人との向き合い方は、現在、私がより良い人間関係を築く力の礎となっています。
また、小学校での学びの中で、特に感謝しているのが英語の授業です。はつ小では、ネイティブの先生による英語の授業があり、完璧な英語でなくても「まず話してみる」という姿勢を身につけることができました。そのおかげでお座敷にいらっしゃった外国の方とも臆せず話しができることは、舞妓としての強みになっています。

伝統文化を受け継ぐ者として、これからも精進したい

お座敷では、初対面のお客様でも数時間のうちに、どのような人柄で、どのような雰囲気を好まれるのか、お客様の趣味を把握しなければなりません。私は小さい頃から人と話すのが好きで、「この人はこんな話をすると喜ぶかな」と考え、会話の中で相手の性格をつかむのが得意でした。小学校でも、友達だけでなく先生ともよく話し、「人と話す楽しさ」を感じていました。

そんな私だからこそ、「舞妓としての美しさ」と「会話の楽しさ」の両方を大切にしたいと考えています。
私は 2023年度、2024年度と二年続けて、「売花奨励賞」の一等賞という大変ありがたい賞をいただくことができました。この賞は、私一人の力ではなく、お姉さん方や女将さん、そしてお客様の支えがあってこそいただけたものです。受賞はとても嬉しかったのですが、それと同時に「この賞に恥じないように、もっと精進しなければ」と身が引き締まる思いです。
舞妓としての芸歴も6年目となり、もうすぐ芸妓としてお座敷に上がる予定です。目標とするのは、お客様はもちろん、お姉さん方や周囲の人々すべてに気を配り、場を盛り上げて楽しませることができる芸妓です。伝統文化を受け継ぐ者として、これからも一層精進していきたいと思います。

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